夜の歌舞伎町に五月蝿いほどの男や女の声が響き、店の前に出ている看板が痛い ほどに光を放ち。 「愛してる」という言葉で満足して家路につき。 今宵もまたその言葉を聞く為に、歌舞伎町へとやってくる。 「愛してる」と言った男や女が、裏口で煙草を吸いつつため息をついているのも 知らず。 ネオンとため息と偽りの愛と 「いらっしゃいませぇ」今日もまた俺の店のホールで何度も聞いた言葉が聞こえ る。 「誰になさいますか?」「金時君でお願いッッ♪」 言葉の後ろが思いっきり弾んだ声の女性が俺を指名する。 あぁ。今日もまた偽りの愛情を、知らない女性に注がなければ。 「はあ…。」 俺は思いっきりため息をついた。 そして、指名された席へ行き、いつも通りの笑顔でこう言う。 「ご指名有り難う御座います。金時です」 ただただ話をして相手が納得して帰って。また来るわ。そう言われお金を貢いで もらう。 俺たちホストは汚いなぁ。と思う。そんな事して、何が楽しいか?と聞かれたら 「なにも楽しい事なんてないさ」と答えるだろう。 お客の1人は初めてこうゆう店へ来たようで…。 「やだよぉ。やっぱり帰るッッ!!」と小声で友達と思われる女に言っていた。 「何言ってるの?ッッ!駄目だよ!恋の傷は恋で癒さないと!!」 どうやらと呼ばれた女性は失恋したらしい。 俺の方を見て気まずそうに頭を『ペコリ』と下げた。 「久しぶりッッ!金時君ッッ!!私、綾香♪覚えてる??」 俺は女性2人に囲まれて座っていた。もちろん他にも男はいたが…。 「か…です。」もう1人がそう言うと俺は 「金時です。」と微笑んだ。 「あ、あの金時さん?」綾香と言った女は他の男と喋っている。 とか言う女は気まずい空気に耐えられず、俺に話しかけた。 「金時で良いよ?」俺が言うと、は『フルフル』と頭を振ると。 「初対面なのに、駄目だよ!!」と俺に説教じみた事を言った。 「俺はで良い?」俺が聞くと、は少し困った顔をした後、コクリと頷い た。 「で、でね?金時さん!金時さんはなんでこの仕事に就いたの?」の質問に 俺は酒を吹き出しそうになった。 「なんで?」俺が聞くと「金時さんはこういう仕事似合わないなぁと思って;」 と言った。 その後すぐに慌てて「で、でも、全然!!か、かっこいいし。い、良いと思うけ ど」と、どもりながら付け加えた。 俺は少し考えて「汚い人間だから?」と答えた。するとはびっくりした顔を 俺に向けて 「金時さんは、私が今まで見た事無いくらい綺麗だよッッ!!」 と立ち上がって叫んだ。店中が静まりかえる。「ごめんなさい…」は謝りな がら座った。 五月蝿くなった店内で、は言った。 「さっき…。聞いてたでしょう?私が振られたって」 俺は酒を飲みながらコクリと頷く。それにしてもこの酒は不味いな…。 「それなのに、彼方はそんな事気にしないで私に接してくれた」 俺はまた頷く。それが仕事なのになぁ。とか思いながら。 「金時さんが初めてだよ。そんな風に接してくれたの」 俺はまた酒を啜った。は何回か振られてるんだぁ。とか思いながら。 「金時さん。私の好きになった人達はみんな汚かった」 俺は酒の無くなったグラスをテーブルに置いた。 「世の中の汚れをまとって…。でも金時さんはそんな汚れ、どこにもない」 俺はそれは違うと言いたいのを我慢して、新しい酒を作った。 「金時さん…。私。そうゆう人に一度でも良い。会いたかった」 俺はやっと酒を作り終えて、を見た。 「ありがとう。彼方に会えて…。良かった」 目に涙が沢山たまって。すごくすごく綺麗だった。 「今日は来て良かった。」 彼女は立ち上がって言った。 「サヨナラ」 涙が一滴彼女の頬を伝って、地面に落ちた。 あぁ。こんな短い間に、こんなに彼女に心を奪われていた。 「また、来てネ♪」なるべく分からないように。 彼女に好きだと伝わらないように。 「ってか。俺がに会いたい。」 どうかどうか、が笑ってくれますように。 どうかどうか、が幸せでありますように。 どうかどうか、俺の思いがに届きませんように。 仕事の所為だと。 偽りの愛だと。 そう思われますように そう思ってるのに、なぜ胸が痛むのか。 「。愛してる」 この仕事について初めての本物の「愛してる」 俺の願い。叶えられたり。 「ありがとう」 は笑って。幸せそうに。きっと俺の思いは届いていない。 いつか届けられるその日まで。 この思いは心にしまっておこう。 ネオンはやっぱり光輝いていた。 ため息は至る所から聞こえる。 偽りの愛はそこら辺で大量にうごめいている。 俺の「愛してる」は君にしか向けられない。 偽りなんかじゃないと。いつ君は気づくのかな? それまで待つ余裕なんて俺には無いから。 いつか言ってやろう。彼女の胸の奥底に響く 「愛してる」 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ++++++ 遅れた上に駄文でごめんなさいッッ!! この後、さんはよくこのお店に来れば良いなぁとか。 さんに対して金時がツンデレだったらいいなぁとか。 さんが「金時」と呼ぶまで、まだしばらくかかるだろうなぁとか。 妄想をふくらませておりました。 それでは。参加させて頂き、有り難う御座いましたッッ!! |